シュトーレンはシュトレンが正しい。なぜ固いのか、その理由は?

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シュトーレンはシュトレンが正しい。なぜ固いのか、その理由は?

ドイツやオランダを中心に食べられている、焼き菓子シュトレン。

日本ではシュトーレンという表記を見かけますが、ドイツ語の発音としては、シュトレン(Stollen)と書く方が正しく、また、オランダ語ではストル(Stol)と言います。

固く焼き上がったその生地は、たくさんのドライフルーツやナッツが練り込まれ、スパイスが利いていて、砂糖で覆われて真っ白なのが特徴です。

その固さやしっとりした食感について、美味しさを保つ切り方など、まだ日本ではなじみの少ないシュトレンについて、書いていきます。

知れば知るほど、シュトレンのことが気になって仕方がなくなりますよ。

目次

なぜ固いの?


シュトレンは、クリスマスを待ちながら食べる伝統的なお菓子です。

クリスマスまでの約4週間を、クリスマスまでの準備期間とするアドベントと言い、このアドベントの間は、毎日、薄く切ったシュトレンを食べます。

昔は、クリスマスイブに初めて最初のシュトレンを食べ、春のイースターまでの3ヶ月をかけて食べていたそうです。

長い期間をかけて食べるシュトレンは、日持ちがする食べ物である必要があります。そのため、シュトレンを作る際、水分量を極力少なくします。

焼く過程で周囲の水分が飛び、表面が固く焼き上がるのです。

シュトレンの切り方

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シュトレンは、毎日少しずつ切って、長期間楽しみます。

そのために、保存性の高い作り方がなされています。

前述した水分量の他、お酒に浸したドライフルーツを使うことや、殺菌効果の高いスパイスをたくさん使うこと、そして、焼き上がりをたっぷりの澄ましバターに浸して油脂によるコーティングをし、さらにその上をどっさりの砂糖で覆います。

その保存性を、食べ始めてからも維持していくために、切り方に工夫が必要です。

ロールケーキにしても、バゲットにしても、端から切っていくのが普通ですが、シュトレンは、真ん中にナイフを入れます。

そして、真ん中から、左右へ均等に、人数分のシュトレンを切り出し、残りは、左右の切り口を合わせて保存します。

こうすることで、シュトレンの中が空気に触れないようにします。

切り口を合わせたシュトレンを、ラップできっちり包み、さらにアルミホイルで包んで保存します。密閉容器や、食品保存用密閉袋などに入れればさらに安心。

季節は冬。

古くから長期保存して食べられてきたものなので、常温保存で構いませんが、冷暗所で乾燥した場所を選びましょう。

中はしっとりのシュトレン

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ドイツには、さまざまな食品に対するガイドラインが定められています。

それらは消費者を守るためのもので、消費者はガイドラインに基づいて商品を選び、購入します。

シュトレンにもガイドラインが細かく定められていて、たとえば、粉100キログラムに対して、ドライフルーツ60キログラム、バター30キログラムを使用しなくてはなりません。

水分量が少ない分、たっぷりのバターが生地をしっとりさせ、ドライフルーツの糖分が保湿の役割を果たします。
さらに、お酒に浸したドライフルーツが生地になじむことによって、生地が徐々にしっとりとしていきます。

時間が経つほどに、味がなじみ、しっとり美味しくなっていくのがシュトレンです。

また、ドイツでは、シュトレンの中に、マジパンというアーモンドの粉と砂糖を練り合わせたものを入れることも多く、このマジパンを入れることで、マジパンの水分が生地になじみ、しっとり感が増します。

成形すると、たっぷり練り込んだドライフルーツが表面に飛び出してきます。

そのまま焼くと、表面のドライフルーツが固くなったり、焦げたりして、食感が悪くなってしまいます。 

そこで、飛び出したドライフルーツは、焼き上げる前に外しておきます。焼いた後に、取り除く場合もあります。

焼き上がった後、表面にかける澄ましバターも、表面に塗るだけでなく、しっかり染みこませることで、しっとりしたシュトレンができあがります。

たっぷりのバターの中に、シュトレンを浸す作り方もあるほどです。

最後に

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見た目にも、またレシピを眺めるだけでも、シュトレンに使われているバターと砂糖の量に驚きます。

しかし、これが、保存性の高さの元なのです。

調べるうちに、ちょっと作ってみたいな、と思ったのですが、使われるバターやドライフルーツの量から考えられるコスト、前日からの準備などの手間を目の当たりにし、すぐにくじけてしまいました。

近年では、本場ドイツでもカロリーなどを気にする傾向にあり、甘みの少ないドライフルーツが使われたり、核家族化により、食べきりサイズのものや、切り分けて個包装されたものが売られていたりと、時代に合わせて変化したものも出てきているようです。

とはいえ、毎日1センチほどの厚さに切り出して食べるのであって、丸々1本を消費する訳ではないのですから、それはアドベントの楽しみのひとつとして、残っていくといいな、と勝手ながら遠い日本から思います。

そもそも、わたしがシュトレンを知ったのは「真夜中のパン屋さん」という小説からでした。

たくさんのスパイスが入ることや、クリスマスまで毎日少しずつ食べることを、初めて知り、とても魅力的に感じました。

毎日一切れのシュトレンは、バターのコクとドライフルーツの甘みにお酒の香り、それにスパイスの香りと刺激。そして何より、その甘さ。ブラックコーヒーと合うに決まっています。

赤ワインもいいかも。

手作りはくじけましたが、近年は日本でもよく見かけます。

今年は、私もどこかで購入してみようかな、と思います。