さくらんぼがうまく結実せずに落果してしまう。どうすればいいの?
甘くて美味しいさくらんぼ。
私はさくらんぼ果樹園で働いていて、毎年たくさんのお客様にお会いするのですが、趣味でさくらんぼを育てているという話をよく聞きます。
「昔から庭にあるんだけど、なっているのを見たことがない」
「木は立派なのに実がならない」
「実がなりかけても、途中で落果してしまう」
などなど、みなさんさくらんぼには苦戦しているようです。
いつか立派なさくらんぼを実らせたいものですよね!
目次
落果してしまうのはなぜ?
さくらんぼは春に白くて可愛い花が咲き、その後青い実がつきはじめるのですが、なぜかその実が赤く色づく前にポトポトと落ちてしまうことがあります。
これを「落果」と言いますが、落果してしまう理由のひとつに生理落果というものがあります。
これはうまく受粉されなかったり、肥料のバランス、要するに栄養分のバランスが良くなかったりすることで、さくらんぼの木がみずから実の数を調整しようとして実を落としてしまう現象です。
さくらんぼは自分の花粉では受粉できないので、違う品種の花粉で受粉できるよう2,3本植えなければなりません。
しかも違う品種であれば何でもOKというわけではなく、それぞれの相性もあることを考えて植えるのです。
どうすれば結実しますか?
確実に受粉させることが大切かと思います。
受粉させるために、うちの果樹園ではマメコバチを借りてきて飛ばしています。
マ メコバチは仕事が丁寧で、たくさんのさくらんぼを実らせてくれています。
でもそれは大規模な果樹園の話。
ご家庭の木でしたら人工的に受粉させた方が確実です。
2,3本の木が必要と言いましたが、1本しか植えるスペースがない場合は「花粉を買う」という手もあります。
また、品種改良によって1本でも実がなるというさくらんぼもありますので、そういうものを選ぶと良いでしょう。
人工授粉の方法ですが、さくらんぼの花が開花したら、他の品種の花粉をポンポンなどで受粉させます。
ポンポンはできれば化学繊維のものでなく、天然のものがおすすめ。
これをできれば毎日行います。
毎日はムリという方は、何日かおきに行ってください。
あまり時間が取れない人は、比較的あたたかく風の弱い日を狙って受粉させてください。
なかなか大変な作業ですが、真っ赤な実がたくさんなるのを想像してがんばってください。
台木や間引き、袋かけは重要ですか?
台木とは、接ぎ木の台にする木のことで、地面の下、根を張る部分になる木のことです。
さくらんぼは種から発芽するのはごく稀と言われていて、木を増やしていくためには台木に接ぎ木をして増やしていきます。
例えば、とっても美味しいさくらんぼの木があって、その木を増やしたいという時には台木を用意してこのさくらんぼの木を接ぎ木にします。
台木に何を選ぶか、その種類によって木が丈夫になったり病害虫に強くなったりします。
さくらんぼの間引きは、うちでは行っていないので絶対必要とは言えませんが、一粒一粒を大きく美味しくするためには、間引きをした方が良いですね。
生理落果が終わった頃から、1か所に2~3粒になるよう間引きします。
さくらんぼに袋かけは基本必要ないのですが、実が赤くなってきたらカラスなどの鳥対策が必要となります。
ご家庭ではネット状になった袋をかけて対策している所もあるとのこと。
ただし、お日さまをさえぎったり、さくらんぼが蒸れてしまうような色や素材のものは、生育が悪くなってしまいますので注意が必要です。
結実したさくらんぼの正しい取り方は?
さくらんぼ狩りを行っている果樹園では、実の部分だけを取るようにという所もあります 。
これは木を痛めないようにするためです。
さくらんぼの茎の部分を力まかせに引っ張ってしまうと、葉や枝までもが取れてしまうことがあるのです。
とはいえ、実の部分だけを取って美味しく食べられるのは、すぐに食べる場合であって、保存には向きません。
ご近所に差し入れしたい時や、子どものお弁当に入れたいなど、取ってすぐ食べない場合は茎から取るのがいいです。
さくらんぼの茎を持ち、上方向へ優しく引っ張ります。
いっぺんに何粒も取ろうとせず、1粒づつ取ってくださいね。
最後に
さくらんぼは育てるのがとても難しいと言われます。
確かに、1本では受粉できないというところからすでに大変な気がします。
それでも愛情をかけてしっかりとお世話をしてあげることで、立派に実をけることができますから、今年はダメでも諦めず、また来年に向けて大切にしてあげてください。