椅子に座ると眠くなる。この眠気をなんとかして!
午後の授業中、単調な仕事や会議中、待ち時間や交通機関での移動中、どうにもこうにも眠くて、という経験は誰しもあると思います。
ただ、この眠気、侮ってはいけません。
考えられる原因や、その深刻度合い、治し方まで、あまりにも様々で、放っておけるものではない場合があるのです。
まずは、自分の生活習慣、自覚症状などを見直し、その原因を探りましょう。
そして、対策を考え、症状の改善を目指しましょう。
目次
日中に眠気を催す、様々な原因
日中に眠い、座れば眠ってしまう、という症状は、誰にもありそうなことです。
自分で原因がわかっている場合、例えば、録り貯めていたドラマがおもしろくてやめられず、夜更かししてしまった、朝まで飲んでしまった、などの場合は心配ありません。その日だけのことで、原因となった行為をやめればよいのです。
また、昼食を食べ過ぎると、満腹中枢の働きにより、覚醒作用のあるホルモンの分泌量が減ってしまい、眠気を催します。これは誰にでも起こることです。
しかし、原因がわからない場合があります。
- 毎晩よく寝ているつもりなのに、日中眠くてたまらない。
- 睡眠は足りているはずなのに、いつも眠くてぼーっとしてしまう。
- 急に眠気が押し寄せてきて、眠りに落ちてしまう。
このような場合は、寝ているつもりでも、睡眠をとれていないのかもしれません。睡眠障害によって、昼間に眠気を催している可能性があります。
他に、病気が潜んでいる場合もあります。眠気の原因がわからない場合はもちろんのこと、睡眠障害や不眠症に自覚がある場合は、すみやかに医師に診てもらいましょう。
だから、座ると眠くなる
立って作業していたときには、起きていられたのに、デスクワークに戻った途端、船をこぎ出してしまった、なんてことはめずらしくありません。
人間は、脳の酸素が不足すると眠気を催します。
立ったり動いたりしているとき、私たちは、気づいていなくても体中の筋肉を使っています。そのため、体内では血液の流れが活発になり、それによって酸素が体の隅々まで行き渡ります。脳へも十分な酸素が送られます。
一方、座ると、少なくとも下半身の運動量は激減し、血流が活発に行われなくなります。脳への血流も減り、脳へ送り込まれる酸素が少なくなります。結果、眠くなってしまうわけです。
座りながら行う作業が、単調である場合も、眠気を引き起こす原因となります。単調作業により、脳が頑張る必要がなくなり、脳への血流が活発でなくなるからです。
つまり、眠気を覚ますならば、脳の血流を活発にし、脳へ酸素を送り込むことを考えれば良いのです。
日中眠気対策
眠くなる原因が、夕べの寝不足など一過性の場合や、食後や単純作業の眠気の場合は、今、この時の眠気を乗り越えるために、以下の方法を試してみましょう。
・運動
できれば、席を立って、トイレに行くなど、少し歩きましょう。
ストレッチも効果的。両手を組み合わせて裏返し、上へ持ち上げて、体を上へ上へ伸ばします。十分伸ばしたら、そのまま横へ倒します。反対側へも倒して体の脇を伸ばします。
肩を回し、肩を竦めて力を込め、次に力を全部抜いて両手をだらんとします。それを2回ほど繰り返します。
ラジオ体操でも、なんでもかまいません。ほどよく体を動かしましょう。全身の血行が良くなります。
最後に、深呼吸をして、酸素を脳に行き渡らせます。
・ツボ療法
眠気を解消するツボを紹介します。いずれのツボも、強く押しすぎないように注意してください。痛気持ちよい程度を目安に。
百会(ひゃくえ):頭のてっぺんにあるツボ。押すと、ズーンと鈍い痛みを感じます。両手の中指の腹で息を吐きながら、ゆっくり押し込み、ゆっくり離す、を2分ほど繰り返します。
風池(ふうち):耳の後ろの大きな骨の下端を髪の生え際に沿って首の方にたどっていくとあるくぼみ。首の中心と耳の後ろの骨とのちょうど真ん中あたり。左右それぞれのツボの親指を当て、残りの指は頭を抱えるようにして、息を吐きながら、ゆっくり押し込みます。
晴明(せいめい):目頭と鼻の骨の間。つまむようにして押します。
・上手にカフェインを摂る
眠くなったら、コーヒーを飲もうと思いますが、実は、即効性はありません。効果が現れるまで、30分から1時間くらいはかかると言われています。食後など、いつも眠くなる時間から逆算して、ホットコーヒーや緑茶などを飲みましょう。
また、効果の持続は、3時間前後。カフェインの取り過ぎは体によくないので、3時間くらい空けつつ、コーヒーなら3~5杯までを目安にしましょう。
妊娠中はカフェインの摂取を避けてください。
カフェインに体が慣れてしまうこともあります。常用、取り過ぎには注意が必要です。
カフェインの摂取は別としても、何か飲み物を飲むことで、気持ちがリフレッシュして眠気が解消されることもあります。
ところで、夕方以降にカフェインを摂ると、肝心の夜に眠れなくなってしまいます。個人差がありますが、カフェインの摂取は17時ごろまでにしておきましょう。
・効果的な仮眠
可能ならば、仮眠を取りましょう。日中の仮眠は、15分ほどまでにしましょう。5分でもかまいません。寝過ぎないよう、必ずタイマーをかけます。
カフェインの項目で、カフェインの効果が現れるまでに30分くらいかかると書きましたが、その時間を利用しましょう。仮眠の前にコーヒーなどを飲むとよいでしょう。
私は、昼食後、コーヒーを飲んで、10分ほど仮眠を取ります。その後、小さなお菓子などを一口食べて、目を覚まし、仕事に戻ります。咀嚼運動も目覚まし効果があります。
病気の可能性
日中の眠気は、病気が原因の場合もあります。そのいくつかを挙げていきます。
・睡眠障害
睡眠時無呼吸症候群や不眠症などで睡眠が取れずにいると、日中、座っただけで眠くなってしまいます。
また、ストレスや、レストレスレッグス(むずむず脚症候群)、うつ、アレルギー、その他痛み、痒み、薬の副作用などでも、不眠症になることがあります。
・ナルコレプシー
まだ原因不明の部分が多い病気です。10代に発症することが多いようです。
日中の強い眠気と睡眠発作、気持ちが大きく動いた時に全身の力が抜ける情動脱力発作、寝入る時に起こる全身脱力症状、寝入る時に夢を見て、それを幻覚のように感じるなどが主な症状です。
薬による治療が行われています。
・突発性過眠症
日中の強い眠気と、1時間以上の長い居眠り。目覚めも悪く、ずっと眠たい。夜の睡眠時間が10時間になることも。
・反復性過眠症
眠気の強い時期が3日から3週間続き、いつのまにか改善していて、またある時から眠気の強い時期が来る…ということを繰り返します。
ナルコレプシー、突発性過眠症、反復性過眠症は、過眠症に含まれます。
・自立神経失調症
患者としては、納得のいかない病名のひとつではないでしょうか。検査結果が悪くなく、原因がわからないと、こう病名がつくというイメージがあります。
自分ではコントロールできない、心臓を動かす、汗をかくなどの神経のことを自律神経といいます。自律神経には活動するときに働く交感神経と、休むときに働く副交感神経があり、それぞれがうまく切り替わって働くことにより、体が正常に機能します。
自律神経失調症は、何らかの理由により、それらのバランスが狂うことで体に不調があらわれていることを指します。
上記以外にも、脳や内臓に重篤な病気が隠れている場合もあります。異常な眠気は、病気の可能性があるということを忘れないでください。
何科に行けばいいのでしょう
眠気の原因がわからないときや、睡眠に不安を感じるときなどは、医師に相談しましょう。睡眠を専門に診てもらえる病院もあります。
自分で見つけられなければ、まずは、かかりつけの内科や小児科に相談します。症状や診てもらう医師によっては、そこで治療が可能かもしれません。適切な病院や科へ紹介状を書いてもらうこともできます。
また、心療内科や精神科、脳神経外科で診てもらえるところもあります。事前に確認しましょう。
最後に
毎日の居眠りは、怠けているように見えたり、生活が乱れていると思われたりします。社会生活に支障を来します。辛い思いをしていないで、一刻も早く、原因をつきとめるべきです。
職場の後輩で、いつも遅刻をし、出勤したと思ったら、船を漕ぐどころか、デスクに伏せて寝てしまうという人がいました。
もちろん、社内ではいろいろ言われていました。でも、私は隣の席で、あまりにも寝すぎるのが気になり、個人的に少し調べてみた時に、初めて「ナルコレプシー」という病名を知りました。
結局彼は、「ナルコレプシー」ではなく、「夜昼逆転生活」が原因だったようです。仕事だけ見れば、頼りになる部分も多くあったので、もったいない状況でした。
やはり、居眠りや遅刻は、印象が悪いものです。また、運転中の眠気などは、危険を伴います。社会生活のためにも、自分の体のためにも、「仕方がない」で済ませてはいけません。
今、悩んでいるならば、すぐにでも動いた方がいい。
治療をすればきっと、すっきりした気持ちと頭で、仕事や勉強がはかどり、元気に過ごすことができると思います。
一方で、眠気に悩まされている人を、ひとくくりに「怠け」と決めつけてはいけないのだということも、心に留めておきたいものです。